
Make It Creative 一般社団法人が、日本マイクロソフト株式会社と共催で学生に向けたワークショップ『Microsoft Youth Spark: コミュニティチャレンジ – IoTで人々をつなげていこう -』を実施。
2015年の5月に、仙台・東京・神戸の三カ所で開催され、合計100名弱が参加しました。本リポートでは、5月17日に日本マイクロソフト株式会社品川本社にて行われた東京開催の模様をお伝えします。
本ワークショップは「どのようにしてIoTを使い、コミュニティの課題を解決し、人々をつなげていくことができるか」をテーマに、デザインシンキングの手法を取り入れながら、各コミュニティのニーズ(課題)を深く理解し、新たなイノベーティブなアイデアをEdisonのArduinoボードを用いて、ラピッドプロトタイピングとラピッドチームコラボレーションを通して創り上げていくもの。
東京開催では高校1年生から大学院生まで、28名の学生が参加した。
ワークショップはまず、IoTを使ったアイデアを絵に描くことからスタート。直後に、
「アイディアを描いたポストイット、一緒に破り捨てましょう!」と、ファシリテーターの合図でポストイットをそれぞれ破くというパフォーマンスに、学生たちの緊張は解れたようで、その目は期待感で輝いていた。
冒頭ではブレインストーミングのルール、IoTの概要をプロジェクターを用いて解説。共通の基礎認識を全員が持ったところで、無作為に学生たちを5グループに分け、「リンゴ」や「眼鏡」など身近なものを一つ対象に、グループ毎にIoTの事例を考え、IoTの概念を定着させる。「質より量」というファシリテーターのアドバイスのもと、学生たちはアイデアをどんどんと捻り出していく。
そして今回のワークショップで考えるコミュニティとして、RCF復興支援チーム双葉町復興支援員として活動する小林辰洋氏から、東日本大震災により福島県いわき市をはじめ、全国で避難生活を送っている双葉町民の様子が学生たちに向けて話される。被災地の現状や双葉町の特徴、ふるさと双葉の継承のため行われている活動などが紹介された。学生たちは熱心に耳を傾け、行動/環境/インタラクション/もの/ユーザーという「AEIOU」の5大要素を踏まえながら、手元のポストイットに要点を書き出していく。
要点をシェアし、双葉伝統の「ダルマ市」がいわき市でも行われるようになり、双葉町民のふるさとを思い出す機会となっていることなど現状を整理し、その上で改善できる課題として「一部の人しかつながることができていない」「継続性がない」といった点を指摘した学生たち。仮想のユーザーをたて、ユーザーを具体化したのち、「コミュニティのニーズ」「ユーザーのインサイト」そして「IoT」の三つを兼ね備えた改善アイデアを出していく。
学生たちの前にはEdisonのArduinoボード、そしてGPSやストレスセンサーなど、普段は耳にはしてもなかなか見ることのないIoTの各パーツが並べられ、学生たちは興味津々な様子で手に取り観察していた。
そうして出た数々のアイデアの中から、プレゼンテーションする最終的アイデアをグループ毎に選出。「タイトルとタグラインを作る」「寸劇でユーザーストーリーを伝える」「デモをする」「ビジネスモデルを作り上げる」という4つの課題を、3時間という限られた時間の中で、学生たちは協力し合って形にしていった。
「新しい形のFacebook」と題した、無意識のうちに人とつながることができるコミュ二ケーションツール「Darumabook」。地域貢献の出会いツールとしてだけでなく、婚活にも使える「Dalumar」に、だるまのキーホルダーを持つ者同士が近づくと反応、音に反応してマップ上でだるまが増えて踊りだすアイデア。さらに、だるま市の大だるま神輿に応援メッセージが表示されるアイデアに、ウェアラブル端末で昔の双葉町の様子を眼前に映し出すアイデア。
それぞれのグループが、個性豊かに双葉町民に寄り添ったIoTアイデアを発表した。審議の最中にも、互いのIoTの仕組みについて質問をしたり新たなアイデアを加えたりと、グループを超え、学生たちがさらに理解を深める姿が見受けられた。
優勝は「Darumabook」となったが、審査委員長のRCF復興支援チーム小林氏の「どれも甲乙つけがたい素晴らしいアイデアだった」という言葉通り、今回のワークショップの集大成としてどのチームも素晴らしい発表を行った。
課題発見からアイデア出し、アイデアの実現化、そしてビジネス化と、ぎゅぎゅっと中身の詰まった1日を終えた学生たち。その顔には達成感、そして頼もしさが伺えた。
Text by Izumi Sakamoto
電力の登場は、私たちの暮らしと仕事のあり方をほぼすべてを変えてしまった。
それと同じレベルの大きな変化が、IoT – モノのインターネット – の登場でも十分に考えうるのである。
イアン・ゴールディン
IoT プラットフォームについて



今回のワークショップでは、プログラミングの経験が全く無い参加者がほとんどという中で、素早くプロトタイプを作れ、カスタマイズが容易となる柔軟なプラットフォームとツールを使用する必要がありました。
インテル社からご支援を受け、各チームにIntel® Edison Kit for ArduinoとGrove Starter Kit for Arduinoを配布しました。インテル Edison は、切手サイズの高性能マイクロコンピューターで、メモリー、Wi-FiおよびBLEが搭載されています。Linuxが使用できるので、デベロッパーは幅広いプログラミング言語を使用することが可能です。Arduino(アルディーノ)ボードと合わせて使うことで、すでにArduinoコミュニティによって構築された膨大なリソースのライブラリ(ソフトウェア・ハードウェア共に)へのアクセスが可能であるのが魅力です。
今回の IoT ワークショップに向け、Node、Soket.io、Cylon.jsを使用してカスタムしたプラグアンドプレイプラットフォームを開発しました。接続したすべてのセンサー(音、光、温度、タッチ、プッシュボタンなど)のライブデータをHTMLページで表示し、また接続されたLED、サーボモータ、ブザーやLCDディスプレイを制御しました。
HTMLページ内でJavascriptを編集することで、参加者は各自の作りたい作品に応じてデバイスをカスタマイズすることが可能となり、オープンソース・ライブラリや一般的な言語をプラットフォーム上で使えることによって、参加者は Microsoft Visual Studio やその他のプラグラミング・ソフトウェアを使ってプログラミングすることが可能となりました。
作例
一つのチームは、ライトセンサーを使って、誰かと一緒に触ると光るダルマ型のデバイスを制作。
もう一つのチームは、その場で開発したバックエンドプラットフォームを、アプリに搭載しました。
アプリのプロトタイプには、ダルマ祭りが開催される会場となる地域の道路のライブ・アクティビティー地図が表示されました。アプリでは、マイクから音を取り込むことで、音のレベルをデータ化。そこからリアルタイムで地図上にダルマが現れました。これだけのものを、たった数時間で作り上げました。(この様子は以下のビデオでご覧いただけます)
各会場でのテック・メンターによるテクニカルサポートも素晴らしく、彼らのおかげで技術面での問題もすぐに解決されました。この場を借りて、株式会社ディー・エム・ピー 佐藤慧氏、佐々木善隆氏、トンガルマン株式会社の松永卓浩氏と、次元氏に、お礼を申し上げます。
参加者の感想
IoTっていうものをちゃんと理解していなかったので、そういうものを例えば手にとって、こういうセンサーがあるよっていう説明があったりとか、そういうのがすごく面白かったし、それ掛けるビジネス、アイデアでビジネスが出来るっていうのが、すごく面白かったです。
会計を専門でビジネスの視点しか持ち合わせてなかったんですけど、今日の技術職の人とかエンジニアの方も参加されてて、実際にどういう技術が実用化されていくのかって考えながら、アイデアを組み合わせて最終形態にしていったと思うので、そういうエンジニアの方たちともコミュニケーションとれる機会を作って、自分をスキルアップしていけたらいいな、って思います。
Ririやっぱり、日本人というか、違ういろんなステークホルダーというか、いろんな業種の人と一緒に考えるっていうのは、すごい楽しいな、って改めて感じました。
Ken僕は、IoTならもっと革命的な発明が出来るんじゃないかな、という理由で来ました。
プログラミングも初心者で、学校に入ってまだ1ヶ月でビジネスについても、全くかじったことが無かったんですけど、初めてビジネス担当を任されて、ビジネスモデルって、本当はどうやってやるんだろうな、っていう、そういう疑問からずっと始めていって、今回で一つものを完成させられたということができたので、とてもためになることでした。自分の経験が、とても深くなったと思います。
Takahikoいつもアイデアを考えるときに、一つ思いつくと、それが実現可能であるかなど、一つのアイデアを広げる作業を行ってしまうが、アイデアを増やしていくという観点が身に付いたのが大きかった。Bigger Pictureを見ることができるようになったと思う。
開催概要
Supporters
メンターとサポーター

続橋 亮 氏
石巻市産業部長

小林 辰洋 氏
双葉町復興支援員(ふたさぽ)

柏木 登起 氏
NPO法人 シミンズシーズ(シーズ加古川)代表理事
佐伯 亮太 氏
国立明石工業高等専門学校 リサーチ・アドミニストレーター
植野 祐一 氏
西宮市教育委員会
Facilitators
ファシリテーター
DARREN BALCOMBE
ダレン・バルコム
2005年にイノベーション促進をミッションとする非営利組織、英NESTA(ロンドン)に加わり、2010年に日本に拠点を移して以降も、過去10年、イノベーションとアントレプレナーシップの促進をミッションとして活動。イノベーションプログラムのデザインおよび実施、また各種イベントマネジメントを得意とする。主なプロジェクトには、The Innovation Lab(イノベーションラボ・ロンドン)の立ち上げや、GEW Japan などがある。
MIWO AMEMIYA
雨宮 澪
2010年より「Make It Happener」(事を実現する人)として、社会にポジティブなインパクトをもたらす各種プロジェクトに参加する。デザイン(プリント・Web・ワークショップ等プログラム)、会計、ファシリテーション、イベント企画および実施、ファンドレイズ等とミッションに合わせて多様なスキルのコンビネーションをもとに活動。主なプロジェクトのひとつであるTEDxTokyoでは2012年よりコアメンバーとして活躍する。
JOSEPH TAME
ジョセフ・テイム
デジタルメディアプロデューサー、パフォーマンス・アーティストとして、また、ビデオプロダクションとして立ち上げた Wild Tame 株式会社のCEOとして、ビデオプロダクションのみならず、パフォーマンス・アート、クリエイティブワークショップ、またソーシャルメディアキャンペーン等で様々な企業をクライアントに持つ。2009年より、TEDxTokyo にて、コミュニケーションチームの共同リーダーとして活躍する。
ALVIN CHEUNG
アルビン・チャン
デザイン思考をビジネスおよびサービスデザインに取り入れているカリフォルニアカレッジオブアーツにてデザイン戦略でMBAを取得。シリコンバレーにて、デンマークの文科省にあたる Danish Ministry of Education などをクライアントとして、デザイン戦略をベースとしてビジョンやデザインワークショップを行う。 デザイン思考をベースとしたマクロとマイクロ双方のユーザーエクスピリエンスおよびプログラムのデザインを得意とする。
Host & Co-Host
主催 & 共催
Make It Creative
Make It Creative 一般社団法人 は、人々がより幸せで、よりコラボレイティブ(協同的)で、かつクリエイティブな社会を作っていけるよう、ソーシャルイノベーションを育成していくことを主たる目的として2014年10月に設立した非営利型の一般社団法人です。共同設立者で理事の4名は、2013年初秋から共に活動をしています。私達は、様々な背景と多様性を持つグローバルイノベーションプログラミングチームとして、日々の活動に変革をもたらすブレイクスルーとなる、体験や体感の機会を創生します。
すべての人々の創造性を信じ、チームのグローバルな多様性とネットワークをもとに作られたプログラムを通して、イノベーションスキルを身につけながら実践を通しての学びと経験を提供し、クリエイティブな新しいディレクションの開拓を実践を通してお手伝いします。

Microsoft YouthSpark
マイクロソフトが全世界的に取り組む、若者の機会創出を支援するグローバルイニシアチブ。3年間で 3 億人の若者への支援を目指している。 日本マイクロソフト株式会社では、日本において、ICT の利活用促進やスキル習得機会の提供を通じ、若者の進学・就労・起業を支援する包括的取り組みである『YouthSpark (ユーススパーク) 』を 2012 年 11 月より開始しており、本イニシアチブでは、チャレンジ支援、21 世紀の学習環境づくり、高度人材育成に焦点をあて、複数のプログラムを 3 か年計画で展開予定。 若者への直接的な支援のみならず、教職員の ICT スキル向上や、タブレット端末や電子教科書など最新の学習環境の導入支援も並行して実施することで、日本の将来を担う世代の国際競争力の底上げと、進学・就労・起業の支援を目指しており、日本の次世代を担う若者支援に注力している。